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映画 Perfect Days 考察

~巨匠ヴィム ベンダース監督のインタビューに寄せて~

1分1秒が惜しくて
『どうか終わらないで欲しい!』
そう願った映画はそうはない。

巨匠ヴィム ベンダース監督は映画作りについてこう語っている。

《どう作っていいのか分からないから、私は映画を作るのです。
作り方が分かっていたら私は映画を作ろうとは思わないでしょう。》

何と勇気づけられる言葉だろうか。

テーマについて充分に知らない!
平山(主人公)について充分に知らない!
簡素な生活について充分に知らない!
慎み深さについて充分に知らない!
何もかも意識する事について充分に知らない!

一つ一つが学びのプロセス。
常にゼロから始める。
経験に頼りすぎると観客を置き去りにする。

自分自身が学びのプロセスにいること、そのプロセスを手渡すことで、観客はその世界の内へ入っていきその一部になることができる。

映画には固有の言語がある!
映画は見方まで教えてくれる!
映画は経験とプロセス!

プロセスとは何を指しているのだろう?

閉じたシステムには行間を読むという作業がないから、観客がその世界に入り込む余地がない。

そして、ヴィム ベンダース監督はリバース ショットについてこう説明している。

《観客が登場人物の目を通して物を見るようになる絶大な効果がある。
ストーリーではなく、この眼差しで別の世界へ観客を誘導することが出来る》

登場人物の目とはPerfect Daysの場合
あらゆる物に対する注意力を指している。

平山の眼差しをヴィム ベンダース監督はこう説明している。
《たった一度しか存在しないもののように見つめるし、どんな細部にも注意をはらっている。》

些細な物に意識を注ぐこと。
大きな世界のヴィジョンに些細なものが深く関わっているという自覚を持つこと。
些細なものに気がつかなければ大きな世界のヴィジョンを持つこともない。
些細なものを軽視すると偉大なもののヴィジョンを持つことは決してない。

また、ヴィム ベンダース監督は映画作りについて確信していることがある。
《映画に関わる全てのスタッフのスタンスが映画に影響を及ぼす。
録音のスタッフがプロセスを大事にしていないとそれは観客に聴こえる。メイキャップ、小道具、他のスタッフも全て。》

商品としての映画はただ眺めるだけだが、
プロセスとしての映画は観客がその中に入る。
プロセスには観客の体と魂が巻き込まれる。

Perfect Daysを通して徐々にあらゆることが初めてことなんだと学ぶ。
それが平山の生き方。

《平山は、木漏れ日がこの宇宙全体でたった一度しか見られないものだということに気がついている。
彼がそのたった1人の鑑賞者だったかもしれない。
その気づきこそが私が本当に大切に思っていること。
これがあるから、鑑賞者を真に巻き込むことができる。
観客を消費者になるしかない牢獄から連れ出すことができるから。
私たちの居る場所はとんでもない牢獄。

牢獄から抜け出すにはいくつかルートがあるが、平山はそのルートの一つを見せている。

彼の行動は新しい世界の創造と同じなのだ。》

巨匠ヴィム ベンダース監督の言うプロセスとは何なのか?探し続けたいと思う。

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